なぜ長引く「むちうち症」
『むちうち症』の主な負傷原因は交通事故ですが、他には
スポーツや労災事故によって発生することもあります。
正式には『外傷性頸部症候群』と言われています。 という病名から分かるように、骨に異常はなく、頸椎周辺の靭帯・筋肉等の軟部組織のケガということになります。
『むちうち症』は治りにくいことが多く、患者さんや社会全体にとっても大きなデメリットとなっています。
では、どうして『むちうち症』は治りにくいのでしょうか。
A.事故の発生状況
衝突時のエネルギーの大きさは、質量×速度です。1トン前後の自動車が衝突すると、たとえ時速10キロ程度でも、転倒や人どうしの衝突に比べ数十倍の衝撃になります。
また、追突された場合では、不意をつかれることが多く首に大きな運動エネルギーが加わり、ダメージを大きくします。
B.首の構造
頸椎は腰椎に比べかなり小さく貧弱です。さらに、上には大きな頭蓋骨が乗っています。骨格だけにするとかなり不安定な構造になっています。
また頭部の重さは5~6キログラムあり、これを支えるために、首・肩・背中・胸の筋肉は緊張を強いられています。
平常でも大きな負担がある首ですが、その周辺の筋肉・靭帯に『むちうち症』が発生し傷つくことにより、痛みが取れにくくなるのは当然のことです。
C.筋肉緊張のスパイラル
『むちうち症』で特徴的な症状に『ストレートネック』があります。
事故の衝撃やその後に起きる痛みに反応し首の筋肉が収縮し、本来なら軽く前方にカーブしている頸椎がまっすぐになってしまいます。しなやかさを失った首は動きが悪くなり、筋肉も強い緊張が続き血行不良になり、さらに痛みが増します。
すると、その痛みに反応し、筋肉はさらに緊張していくという負のスパイラルに落ち込みます。
D.心因性
『むちうち症』が長期化すると、仕事・家庭内の人間関係に悪影響が出てくることがあります。さらに、損保会社や加害者との交渉が精神的ストレスとなり『うつ』状態に陥ってしまい、これが症状の長期化へつながることもあります。
これにより、PTSD(心的外傷後ストレス障害)が発症し、痛みを増加させることもあります。
このような症状がある場合は心療内科での治療も必要になります。
E.脳脊髄液減少症
『むちうち症』の典型的な症状に『
首肩が凝る・頭が痛い・気分が悪い・めまい・倦怠感等です。
実は『
脊髄神経は、『硬膜・くも膜』の二重の袋に入っていて、脳脊髄液で満たされています。
事故の衝撃で首が前後に振られた際に、その衝撃で穴(ピンホール)が開き、少しずつ脳脊髄液が漏れ出すために、脳の安定性が低下しさまざまな症状が出現することになります。
診断には専門の病院で脳MRI・RIシンチグラム検査等が必要です。
脳脊髄液減少症の合併がある場合を除いて、
『むちうち症』は整骨院の治療で全快します。
大切なのは、初期の安静・固定・冷却。
その後、動きの悪くなった関節・筋肉への治療や、血行不良を改善するための治療を行い、運動・ストレッチ、生活スタイルや姿勢の改善に取り組み、根気よく治療を続けることです。