~腰痛とストレス~
この春、厚生労働省の大規模調査で、国内の2,800万人が腰痛に悩まされていることが初めて明らかになりました。
腰痛によって働けなくなるなど、その経済的損失は、年間7,000億円以上になると試算されているのです。画像による診断を行っても、その85%は、原因が特定できないことが分かってきました。
腰の筋肉は加齢や運動不足によって衰えやすく、これまで、診察や画像検査で異常が見つからない腰痛については、こうした姿勢の悪さや筋力の低下が大きな原因と考えられてきました。
さらに、最新の研究で、特定できない痛みの原因が、腰以外にあることも明らかになってきました。腰痛の原因は、ストレスによる脳の機能の変化にあるといいます。
人は、腰に刺激を感じると、痛みの信号が背中の神経を通って脳に伝わります。近年解明されてきたのが、痛みをコントロールするドーパミンシステムという脳のメカニズムです。
これは、痛いはずの状況にあっても、その痛みを抑制するドーパミンという脳内物質が大量に分泌されて、感じる痛みを軽減させながら身を守る、もともと脳に備わっている機能です。
しかし、日常的にストレスを受け続けていると、脳内物質のバランスが崩れ、このシステムが働かなくなります。するとドーパミンの分泌が減って痛みを抑えられなくなり、ますます痛く感じます。その上、その痛みがストレスとなってドーパミンの分泌がさらに少なくなり、痛みが慢性化するという悪循環です。
ストレスによる慢性腰痛を何年間も抱えていると、よけいストレスに弱くなるもの。以前なら耐えられたストレス状況でもすぐに腰痛になってはね返ってきたりします。
誰にでも日頃の上手なストレス解消は大切ですが、特に”腰痛もち“の人は、心をいやす”心の処方せん“が痛みの強弱を左右することをお忘れなく!
ストレスが続くと腰痛が重症化して、仕事を休むことが多くなり、職場の人間関係まで悪くなる人もいます。こういう人こそ、腰痛は心からのSOSサインだと自覚して、まずは心のケアを。
また、ウォーキングなど適度な運動習慣も欠かせません。運動不足で腹筋や背筋の筋力が落ちれば、ますます腰痛体質から抜けられなくなってしまいます。
喫煙も腰痛の危険因子でもあります。血管を収縮させるニコチンの作用により椎間板が変形・変性する恐れがあり、喫煙本数が10本増えるごとに腰痛のリスクが10%上がるという日本整形外科学会によるデータもあります。
病気や医療、痛みなどに対し間違った思い込みを持っている方に対し認知行動療法等も高い治療効果を得られる事があります。